お店を開業するための資金調達はどうすべきか。
大抵の方が自己資金で足りない部分を補うために、様々な資金調達の方法を模索していると思います。
資金調達の方法には、大手金融機関や地銀などの民間金融機関、地方自治体、政府系金融機関、最近ではクラウドファンディングや投資家から出資を受けたり、補助金や助成金など様々な方法があります。
一般的に多い資金調達方法の日本政策金融公庫の制度融資「創業融資」における審査基準を、3つのポイントにしてお話ししたいと思います。
目 次
融資を受けるにあたって注意すべきこと
飲食店を起業するためには、開業する店舗の敷金・礼金や保証金、厨房設備・備品、内外装工事費用、オープン前の材料費や研修費、販売促進に使用するチラシやホームページなどの広告費など、様々な費用がかかります。
特に難しい資格もないので始めやすい飲食業界ですが、厨房設備や備品などを全て揃えるとなると大きなお金が必要です。
融資を受けるにあたって注意すべきことは、お店を廃業せざるを得なくなった時に上記のような大きな費用が重くのしかかってくることです。
飲食店を開業して資金を調達することはリスクがあることを念頭に置き、万が一を考えて出来るだけ金利が低く、無担保・無保証人の制度融資を選んでください。
間違っても融資審査が簡単だからといって金利が高いものや、返済にリスクがつくものは避けるべきです。開業は出来ても今後の経営に大きな影響を及ぼしてしまいます。
しっかりと自分の損益試算を把握して、返済比率がどの程度可能なのか見極めておきましょう。
日本政策金融公庫とは
事業を開始した当初でお店の資金調達方法でおすすめなのが、日本政策金融公庫の「創業融資」です。
日本政策金融公庫とは
各都道府県のエリアに支店があり、政府が100%出資・運営している金融機関。民間金融機関とは異なり、政府の政策などに影響を受けやすかったり、経済発展や雇用促進に影響を与える起業や創業者に積極的な面があります。
日本政策金融公庫(以降、名称を「公庫」に省略させて頂きます)の創業融資は、低金利で無担保・無保証人の融資制度がありますのでおすすめの資金調達方法です。
起業してからおすすめの資金計画の流れは、創業時は公庫で借入し、事業拡大などで資金が必要であれば、国が組織する「商工会」や「商工会議所」の会員になり経営指導を受け、2期以上確定申告をしたら「マル経融資」という低金利・無担保・無保証人の制度融資も受けられます。
マル経融資の条件として商工会や商工会議所の会員にならなければなりません。
会員になるとマル経融資を受ける以外のメリットもあり、創業時の不安な時期に相談や支援をしてくれる商工会や商工会議所は助けになるでしょう。
おすすめの資金調達方法である公庫の借入を実行するためにクリアしなければならない審査基準があります。
その中でも重要視される審査基準のポイントが下記になります。
審査基準における3つのポイント
①あなたがその事業を始めるに至った経験は?
②あなたが必要なモノは、あなたの事業に必要なものですか?
③あなたのビジョンは夢だけでなく現実的なおカネのことも含めて、先の見通しが出来ていますか?
審査時に提出する創業計画書には、上記の3つのポイントはしっかりと抑えておきたいところです。
ここからはその重要視される3つの審査基準について、詳しく説明します。
日本政策金融公庫の借入申込書等ダウンロードはこちらへ
重要視される3つの審査基準
①事業者の経験と信用力
事業を始める時(創業時)は、もちろん事業の実績がありませんので事業を始める前の経験が大事になってきます。
始めようとしている事業に対して、ノウハウも経験もない状態で始めても成功する確率は低いと考えられるからです。
それでも始めたいと思うのであれば、そのノウハウや経験を何かでカバーし、事業計画書にしっかりと書き込んで、説明する必要があります。
また公的であれ民間であれ金融機関などに申し込む際には、申し込む個人の信用情報は調べられます。
信用情報とは、クレジットローンやローンの申込みや契約、支払い遅延がないか、残高等の支払い状況が登録された情報です。
借入をする前に自分の信用情報に問題がないか確認しておきましょう。
②資金使途と自己資金
お店を始める際に必要な費用はどんなものがあるのか、「資金使途」を明確にしておきましょう。
当然ですが、どんなことにお金を使うのかを明確にしておかなければ貸し手側も融資しようとは思えません。
その時に設備資金と運転資金でわけておきましょう。
設備資金と運転資金
設備資金とは、厨房設備・機械、土地、建物などの資金のことを言います。その設備に関わる資金使途が事業に本当に必要なものか、しっかりと事業計画や見積書をもって説明しなければなりません。
運転資金とは、仕入れの材料費や研修費・広告費など、事業を継続していく上で必要な資金です。
上記の設備資金と運転資金では、準備する資料(損益試算表や見積書など)や返済期間、審査の方法が変わります。どちらにしても、生産性向上、顧客獲得や人材確保、販売促進のための資金など前向きな説明でなければなりません。
自己資金
上記のように事業に必要な資金使途が明確になってくれば、自己資金も重要なポイントになります。では融資を受ける際に自己資金はいくらあればいいのでしょうか。
最低要件としては、1/10以上は必要と言われています。
よく勘違いされるのが、借入する融資額に対しての自己資金ではなく、事業に必要な全体の資金使途に対しての自己資金が1/10以上である点と、自己資金の要件を満たしているから必ずしも融資が受けられるわけではありません。
これまで、1/10程度の自己資金で融資を受けられたケースもありますが、可能であれば、自己資金は1/3程度用意出来た方が可能性が高まります。
次の審査基準③で説明する事業の見通しと返済計画が含まれた事業計画がとても重要です。
③事業の見通しと返済計画
創業融資に限らず融資で借入する場合は、事業計画書に必ず損益試算表に返済計画を入れて、数字で明確に説明できるようにしておきましょう。
その損益試算表の売上・客数、原価、人件費やランニングコストである固定費、借入返済金などを含めた返済計画が、一目でわかることで事業の信憑性が高まります。
事業の見通しをうまく説明するためにも最低でも1年分の損益試算表は用意しておきましょう。
また売上高や客数はその数字の根拠を求められます。
なぜその数字になるのかは、市場調査・地域の統計調査やマーケティング、集客方法、お店や商品の構造や仕組みなどで納得のいく説明をしましょう。
さいごに
この記事の「融資を受けるにあたって」でも触れましたが、事業は継続することが1番難しいと言われています。
うまく創業資金を融資出来て事業を開始出来たとしても、想定していた範囲内で事業計画通りに進まなければ経営継続は難しくなります。
事業を続けていると資金不足や人の問題など、自分の意志だけでは継続できない場面もあり、売上や利益を求める場面もたくさんやってきます。
しかし、売上や利益は「事業の目的」を果たすための条件や「手段」であって「目的」ではないということを忘れないようにしてください。
よくこの「目的」と「手段」が入れ替わり、何のために事業を始めたのかわからなくなってしまっている方が多いです。
そうなってしまうと顧客だけでなく従業員も、売上や利益のために商品を買ったり働いていると感じてしまうと継続自体が難しくなります。
その為にも、現実的な事業計画と無理のない資金計画を心掛けましょう。
CRAFT + FOOD CO.
代表 甲斐 優志