あなたが始めるそのお店に、その設備は合っていますか?
パン屋さんやベーカリーカフェを起業したい、もしくはこれからベーカリーを始めたい場合、これから始めるお店にはどんな設備が必要なのか、またどの設備を購入すればいいのか、わからない方もたくさんおられると思います。
今回はパン屋さんやベーカリーカフェを起業したい方や、設備の追加をお考えの方に、そのパンや焼き菓子などを焼くオーブンについて、ベーカリーコンサルタントの経験から解説したいと思います。
目 次
オーブンの基礎知識
パンを焼く機械であるオーブンは電気やガス仕様などがあり、最近では薪を使って焼く石窯やレンガ窯などがあります。
今回は店舗向けのベーカリーをお考えの方に、商品やコンセプトに適したオーブンの選び方についてお話ししたいと思います。
店舗向けに適した業務用オーブンの場合、熱源が「電気」か「ガス」かというのはその違いだけで、そこまで気にする必要はないと考えております。
注意する点があるとすれば、安全性や電気容量、ガスの元栓など設備的なことが、立地面や費用面など総合的にみて店舗にどちらが適しているかです。
それよりもどんな商品を扱うか、その商品への熱伝導方法の考慮、窯の庫内温度を高い温度で維持できるか、製造容量やサイズ、スチームなどの機能の有無で選ぶ必要があります。
デッキオーブンとコンベクションオーブン
オーブンには、一般的にデッキオーブンとコンベクションオーブンがあります。
デッキオーブンは、天井(上火)と床(下火)と空間の3点で調整して焼き上げるタイプのオーブンです。
デッキオーブンの特長は、商品を保水したまま焼き上げることに特化しており、ふっくらした食感で焼き上げることが出来ます。
また作業上、熱が逃げにくい構造利点があります。
コンベクションオーブンは、熱風を循環させて焼き上げるタイプのオーブンです。
短時間で焼成することが出来、商品の表面をさっくりとした食感に焼き上げることが出来ます。
オーブンを起動させてから設定温度までの上昇が早い利点があります。
どちらのタイプのオーブンも各メーカーから様々な強みや特長をもったものが販売されています。
メーカーによっては、実際の設備を配置したテストキッチンで設備に触れることや、焼成したパンや焼き菓子などをサンプルで見せてくれるところもあります。
商品やコンセプトに適したオーブンの選び方
失敗しないためのオーブンの選定基準を、4つのポイントにまとめました。
オーブンを選ぶ4つの基準
①店舗のコンセプトを決める
まず店舗コンセプトの業態が、パン屋さんなのか、ベーカリーカフェやレストランなどで、オーブンのタイプは大きく分かれます。
商品でいえば、様々な種類の商品を扱うのか、高級食パンやフランスパンなどのハード系の商品を扱うのか等でも決める必要があります。
店舗コンセプトを決める上で、ターゲットとしている顧客がその商圏(地域)にどれだけ住んでいて、店舗や商品に対してどれだけ需要があるのか等も見極めなければ、次の売上予算を決めることは出来ません。
『商圏』については下記をご参照ください。
②店舗の売上予算で決める
一般的なベーカリーでは、売上予算から逆算して、天板の焼成ローテーションから商品個数を計算して、製造金額を決めていきます。
天板1枚に乗る商品の数量とその天板の枚数が入るオーブンの段数によって推移する効率基準です。バタールやバゲットなどの直焼き商品の場合は、一度の焼成に占める段数で計算します。これによって仕込む生地の重量なども無駄なく計算する事が出来、オーブンだけでなくミキサーや醗酵機などの設備容量も変わります。
③焼成スケジュール(製造工程表)で決める
お客様が多く来店する時間帯や、どの時間帯にどんな商品を店頭に並べたいのかによって、商品の焼成スケジュールを決めます。
朝1番やピーク時にたくさん商品を焼いてチャンスロスをなくしたいのか、常に焼き立て感を演出したいと考えて、1日に何回も焼き立てを出したいのか等によっては、一度に焼き上げる商品ボリュームが変わります。
商品ボリュームによっては、②でお話しした焼成ローテーションが変わってしまいます。
余談になりますが、焼成スケジュール(製造工程表)があると、お客様が商品を購入する1番良い時間帯をお知らせ出来たり、店舗内での従業員同士の焼き立てなどの情報共有や、仕事の効率化などにも活用できるのでおすすめしています。
④店舗規模、動線や作業工程で決める
導入したいオーブンが、その他厨房設備の店舗容量(電気やガス)、店舗規模の大きさや配置に合っているのか。さらに時間帯によって連動し変化する作業工程とが適切かを判断します。
お店を始める時に、いちから建てる場合よりも、居抜き店舗や建物に制限があるケースが多いと思います。
そうした場合に設備の容量が足りない事で費用が掛かったり、実際に設備が搬入された時にスペースが狭かったりする事で、時間帯ごとに他の作業動線とぶつかってしまったりする事もあります。
オーブンには、上段にオーブン、下段に醗酵機を組み合わせたり、六取り天板の2枚差しや4枚差しタイプ、搬入しにくい場所にも対応できる分割式のオーブンなどもあります。
上記の①~④の基準を用いてオーブンを選ぶことによって、それ以外の厨房設備、売上や店舗規模も組み立てられます。
新品か中古か?
オーブンの耐用年数について
オーブンの耐用年数は減価償却の観点からも考慮し、基本は約10年と考えられています。もちろん大事に扱って使用すれば、使用に関していえば10年以上使い続ける事も可能です。
もし中古で設備購入をお考えの場合は、耐用年数と設備の状態を把握して今後の事業活動に支障がないようにしてください。
よくあるケースですが、年数の古すぎる型では、メーカーで部品が製造中止になっている場合もあります。購入前にしっかりと調べておきましょう。
まとめ
オーブンは、高額なものから必要最低限の機能だけで比較的安価なもの等様々なものがあります。
店舗コンセプトに適したオーブンを選ばなければ、その費用や生産性が大きく変わってしまいます。
上記の商品や店舗コンセプトに適したオーブンの選び方①~④を基準に自分の店舗に合ったオーブンを選んでください。
それによっては費用を総合的に抑えることも可能かもしれません。
自分だけで考えてしまうとわからない事もあると思いますので、メーカーの方や業界の知識がある方に一度相談される事をおすすめ致します。
あなたが思い描いているお店はどんなお店ですか。
自分に合った、無理のない店舗づくりは出来ていますか。
もし、気になるところがあればお気軽にご相談ください。
ベーカリーコンサルタント
藤田 勝文