自分がどのようなコンセプトや商品で事業を始めるのかが決まり、お店を構えたいと思った時、次にやらなければならないのが、どの場所でお店を開業するかです。
なぜ、店舗の立地を先に決めなければならないのか。
それは、資金調達や借入の後ではお店を探すことは出来ないからです。
自己資金が潤沢にある場合は除きますが、実際に日本政策金融公庫や銀行などで資金調達する場合、事業計画書を作成します。
事業計画書を作成する際には、店舗住所や商品・サービス・自己PR・コンセプトやターゲットなど、また具体的に設備投資や運転資金でどれだけ資金が必要なのか等、見積書や仮契約書などをもって資金調達をする上で説明が必要になります。
それらは立地をある程度決めていなければ出来ないことばかりなのです。
自分がこれから開業するお店をどこにするか…
これはお店をオープンするにあたり、とても重要な要素です。ましてや開業する場所によって、今後のお店の未来に影響するとなれば当然だと思います。
お店は駅から近いのか、市街地なのか、郊外なのか。
どんなお客様が住んでいるのか。周りにはどんなお店があるのか。
今回は、お店を出店するにあたり、抑えておきたい立地戦略のポイントを8つご紹介させて頂きます。
もし現在お店を運営されている方も、自分の立地がどういう立地か知っておくことで戦略を練ることが可能です。
目 次
立地を探す上での最低条件
立地を探す上で最低条件があります。
それは、自分が “誰に” “何を” “どのようにして” 売るのか、売りたいのか決まっていることです。
これが決まっていなければ、立地戦略を練る事が出来ません。
また決めておかなければ、今後の経営が難しくなるかもしれません。
提供する商品やサービス、業種によっては、駅前が良い場合や住宅街、自然の豊かな場所が良い場合もあります。
現在ではECサイト、ネットショップなどの立地にとらわれない店舗運営もあり、集客方法も多様化しSNSなどをうまく活用する店舗もあります。
自分たちが何をしたいのか、そしてお客様の何を解決できるのかを考えてみてください。
もし自分が “誰に” “何を” “どのようにして” 売るのか、売りたいのかがわからない場合は、下記ブログ記事をご参考ください。
立地戦略8つのポイント
①商圏統計調査
店舗にとっての立地は、顧客にとっての立地。
コンセプトが決まり、店舗物件の地域や場所に目星がついたら、その出店予定場所の商圏を調べる必要があります。
「お店にとっての商圏調査」とは何を指すのか。
それは店舗を利用する消費者が生活している地理的な範囲で、その店舗の商圏内の人口・年齢層、世帯数、各人口世帯数の増減、商圏内企業の従業員数、またどんな人が住んで、どんな生活をしているのか等、コンセプトを元に導き出した顧客が、お店の業種と合っているのかを調査します。
日々生活していく中で、優良顧客となってくれる顧客がお店に近い方がお互いにとっても有利に働きます。店舗にとっての立地は、そこに住む・働く・滞在する顧客にとっての立地でもあります。
せっかく作り上げたコンセプトも、顧客対象ではない地域で出店し、販売やサービスを行ったとしても、すぐに来店して頂くことは難しく、ましてや競合他社や大企業などは、商圏における統計調査は当たり前のように調べています。
開業したのに思ったような売上やお客様が来店されない…そうならない為にも、まずは商圏の統計調査を行いましょう。
統計調査を行うことで、コンセプトに合った顧客の人口・年齢層、世帯数など様々な顧客情報が数字で表れます。
例えば商圏範囲内のデータを分析できれば、販売しようとしている商品やサービスの商圏売上などを読み解くことが出来ます。また、この後の②~⑧までのポイントを抑えることで、店舗の立地条件を見極めていくことが出来ます。
②商圏範囲(商圏エリア)の設定
商圏範囲(商圏エリア)と言えば店舗を中心に円形を想像されると思いますが、正確には店舗までの時間を測定しながら距離や範囲を測定します。
なぜ時間で測定するのかというと、実際に店舗から歩いてみると…
駅近くであれば踏切、河川、大きな建物、車の場合は一方通行で回り込まなければ来店出来ない道路、中央分離帯、信号の数・交差点、土日の渋滞など「遮断物」がたくさんあります。
その「遮断物」による影響を考慮し、商圏を設定しなければ自分のお店にとって必要な顧客が来店するのに手間や苦痛を感じるようになってしまいます。
それでは来店頻度も減ってしまい、今後の売上担保も取りにくくなります。
では店舗からの商圏範囲(商圏エリア)を設定してみましょう。
時間は10分~15分ぐらいで設定し、移動手段は徒歩、自転車を1次商圏、車などを2次商圏、それ以外は3次商圏でそれぞれで想定してみましょう。
円形ではなく、縦横色んな形の商圏範囲(商圏エリア)になるはずです。
最近では便利なツールもあり、設定した店舗や場所までを徒歩・自転車・車などの交通手段毎に、時間で商圏範囲を設定し統計調査まで簡単に作れるものもあります。
ご相談フォームに「調べてほしい住所」と「統計情報と商圏範囲を調べてほしい」と記載して送って頂きましたら、統計ツールを使い統計データにしてメールでお送りする事も出来ます。
③店舗までの生活動線の確認
②の商圏範囲(商圏エリア)を地図上の範囲で把握できたら、次に気をつけて頂きたい点があります。
それは商圏範囲(商圏エリア)内の顧客の生活動線を確認する必要があるという事です。
なぜかというと、その地域に自社のターゲット層が住んでいたとしても 顧客の移動する方向・通行量や、動きが多く人が集まりやすい時間帯、地域性などが、店舗の営業時間、提供するサービスやスタイルに合わなければ、最適な集客は望めないからです。
例えば、自分たちがターゲット層として30代夫婦や独身の男女が多く住む地域をターゲティングしていたとします。
しかし共働き夫婦や単身者が多い場合は、朝には会社に出社してしまい、昼間はその地域にはいない事が多いでしょう。
商圏範囲(商圏エリア)を調べる時は、ターゲティングしている消費者の生活動線も曜日や時間帯など毎に調べておく必要があります。
それによって戦略や戦術も最適なものにしなければなりません。
④店舗の視認性
②商圏範囲(商圏エリア)、③消費者の生活動線に踏まえ、店舗の視認性も重要になります。
店舗までの道のりで、曲がり角で見えにくかったり、街路樹で隠れたりしていませんか。
車で通行する場合は、スピードが出やすい道路や下り坂なのか、店舗の向きが進行方向の背中を向けていたり等、店舗の見え方ひとつで、お客様の気づき方が変わります。
お客様の気づき方が変わるとどうなるのか。
お店の認知度調査では、ほとんどがお店を見て知ったという方が大半を占めます。
普通に通り過ぎているように見えても、実際は見られているものです。
まずお客様がお店を認知しないことには、来店はありえませんので、見え方ひとつでも認知度は高まります。
お店の土地の広さ、建物を建てる位置、居抜き物件の場合など想定して物件を選びましょう。
知らないで初めて訪れる場合、外から見えるお店の造りや構造で、実際にお店に入るかどうかをお客様は判断します。
せっかくお店の前まで来て頂いたのに、お店に入って頂けないのは勿体ないし残念です。
ターゲット層の来店状況を踏まえて、お客様が来店しやすいように不安を取り除いてあげましょう。
⑤街の将来性
街にも年齢があるのをご存知でしょうか。
昔はニュータウンだった地域も、数十年経てば変化していきます。
若い世代で構成されていた世帯も数十年経つと、子供も大きくなり自立し、結婚して違う地域へ移り住む場合も少なくないと思います。
自分のコンセプトに合った顧客が、そういった地域に適しているか統計分析だけでは見えない部分が、実際に町を歩いてみると見えてきます。
また年齢だけでなく公共機関や銀行、スーパーマーケットやコンビニなど、生活やライフスタイルに直結する要素が街の機能性としてどれだけ充実しているかでも、将来性が変わります。
家を購入する際でも、まわりにどんな施設や環境、公共交通機関との連携、住民に対する助成制度・街の財政状況、都市計画などが整っているかで、自分の住む場所を決めるように、その街に今後どのようにして人が移住してくるか、出て行ってしまうかが見えてきます。
その辺りも含めて、周りの施設や環境も見ておくと地域性も見えてくると思います。
特にスーパーマーケットやコンビニエンスストアなど日常品を売っているお店は、品揃えや生活必需品の価格帯など地域顧客に敏感に対応しています。
地域のお客様が集まりやすい場所なので、自分のお店の参考にするのに最適な場所と言えます。
⑥競合店調査
商圏調査をする際に1番気になるのが、競合店だと思います。
周りの同業他社店舗がどのような商品やサービスで展開しているのか、売上に関わることなので気になるところだと思います。
競合店調査をする上で最低でも、店舗のファサードや内装のデザイン性、厨房の見える部分やトイレなどの清潔感・整理整頓、販促内容や演出、メニュー内容、主力商品が何なのか、価格帯、客単価、サービスや接客、従業員教育ぐらいは調べておく必要があります。
また他社店舗の商品を見て、自分たちの商品が優位に立っているとか負けているとかを見るのではなく、どのような商品やサービスで、どのような顧客に対して、どのようにして販売しているのかを注意深く見て頂きたいのです。
競合店と思っていた他社店舗でも、顧客ターゲティングが違えばポジショニング次第で、それほど競合店にはならない可能性があります。
同業他社店舗が多い地域でも、どのお店も廃業せずに続いている地域はポジショニングがそれぞれうまく機能しているのです。
どのお店も顧客にとって必要だから潰れないわけです。
そして競合店はあなたのお店のお手本です。
同じ顧客ターゲティングだったとしても、あきらめないでください。
注意深く競合店を観察して、自分たちだけの強みを生かして差別化することで競合店ともうまく共存していく事も可能です。
これからの時代はお店同士で競争するのではなく、商圏自体の需要性を高め合うことが出来れば、広い範囲で顧客を獲得することも可能になります。
自分たちだけが全てではありません。
まわりの店舗や施設など、様々な人たちと共有共存していくことで、街も豊かになります。それが最終的に自分たちの将来や利益にも繋がっていきます。
⑦固定費となる家賃の相場
お店の場所が決まってくると気になるのが家賃です。
当然、駅前や人気のエリアだと家賃は高くなります。
反対に家賃が安いエリアを選ぶと、郊外やあまり人気がない地域になります。
家賃は今後も毎月支払っていく固定費の中で占める割合が高い費用です。
開業してからも支払っていけるか考えると、とても重要なポイントです。
まずは家賃の相場を調べましょう、そして出来るだけ毎月のランニングコストである固定費は支払える金額かを確認しましょう。
毎月固定費で支払う家賃は、売上高に対して7~10%になるように設定しましょう。駐車場がない物件なら、別で借りる駐車場も家賃に含めて計算します。
売上高に対して家賃の比率が何パーセントを占めるのか等は、開業する前に必ず、損益分岐点と予算試算表は求めておくことが大事です。
的外れな売上設定をして、高い家賃の物件を契約してしまうと、後々お店を続けて経営していくのが難しくなってしまいます。
⑧施工前・契約時の注意点
物件候補は1つではない事も多いと思いますし、何度も見に行く事もあると思います。
出来れば工務店や施工業者と、自分たちが作り上げたいお店の大きな費用負担がどこなのかよく相談してから見に行かれることをおすすめします、可能なら同行してもらいましょう。
なぜなら、現時点での問題点を専門的な視点から見つけてくれるからです。
もちろん工事が始まってからわかる事もたくさんありますが、出来るだけリスクヘッジしておくことで、思っていた以上にお金を使わなくて済むからです。
今までの経験上、どんなに綿密に計画しても、オープンするまでに必ずと言っていいほど様々な障害は起きます。
施工時の費用面からみても、土間工事や電気工事など場合によっては高額になるケースがあります。また手続きや申請に時間がかかり、払わなくていい家賃が発生したりするケースもあります。
契約時も注意点がたくさんあります。
1つ挙げると、家賃の発生する月はいつからなのかです。
通常、施工時からが多いと思いますが契約書の内容や条件によってはその限りではありません。
他にも更新料や解約時の原状復帰など気をつける点は様々です。
また契約締結のタイミングも気をつけましょう。
資金調達などとうまくタイミングを図らないと、敷金や家賃、仲介手数料などが無駄になってしまうかもしれません。
契約書はとても大事です。ここを疎かにされる方がとても多いです。疎かにしたために、あとで後悔している人をたくさん見てきました。
わからない場合は、専門家や契約書をよく理解している人に相談することをおすすめします。
さいごに
『立地選びは戦略において重要』…しかし
商品やサービスだけでなく、店舗のロケーションや立地選びが戦略において重要なのは、ここまで読んで頂けた方にはご理解頂けたかと思います。
戦略を失敗してしまうと、どんなに戦術を立てても、初めこそ通用しても短期的になり、長期的なものにしていくのはとても難しくなります。
その場合、必要な資金を残せないばかりか、立地が良ければ必要なかった経費や出費が増えていきます。
しかし、全ての条件を整えることは、ほとんど不可能な事が多いです。
見つかったとしても、他の人にすぐに押さえられてしまうケースが高いでしょう。
では、どうすればいいのか。
『立地選びは戦略において重要』ですが、そればかりに囚われないことです。
立地も、売上や利益も、すべてはあなたが目指すべき目的のための必要な条件に過ぎません。
自分の立地に足りない部分があったとしても、それで今後の事業が必ずしも失敗するということではありません。
悪条件の立地でも、それを強みに生かした方法でうまく機転をきかせて差別化している店舗や事業者もたくさんいます。
ただ今回のようなポイントを知っていて立地探しをするのと、知らないで立地探しをするのとでは、お店の未来が大きく変わってしまいます。
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という言葉があるように
大事なのは顧客がいることを忘れずに、自分の強みや弱みを知り、自分たちのライフワークバランスを考えながら、機会を逃さない為にも優先順位を決めることが大事です。
どんどん移り変わっていく世の中に対応する適応力と変化が、経営者や企業にとって必要な能力なのではないでしょうか。
CRAFT + FOOD CO.
代表 甲斐 優志