“食べるために生きるのではなく、生きるために食べよう”
私たちがこの言葉を掲げるのには、理由があります。
それを紐解くには、少し過去の話しをしなければなりません。
かつて私たちは、この言葉とはまったく逆の世界に身を置いていました。
ベーカリーやカフェをはじめとする店舗運営の現場、わずか数人の本部で多数の立ち上げや事業計画、運営管理に奔走し、ひたすら走り続ける日々。当時は売り手市場の大量生産・大量消費の時代であり、大きなお金が動き、質よりも量が求められる「儲かればいい」という空気のなかで、私たちは次第に「食べるために生きる」ようになっていました。
会社のため、家族のため、共に働く仲間のためにと、キレイごとを自分に言い聞かせながら、目の前の数字を追いかける毎日。しかしその一方で、本当の経営の在り方とは何なのかを見失い、「本当に世のため、人のために動いている会社や経営者はいるのだろうか」という疑念が拭えなくなっていっていました。
「どこにもないなら、自分たちで作り上げるしかない」
そう悟った私たちは、どこまでできるのか手探りのまま「起業」という道を選び、歩みを始めました。
かけがえのない仲間との出会い
そんな新しい挑戦のなかで、私にはかけがえのない仲間がいました。
面接にやってきた彼は、真面目で腰が低く、誰とでもすぐに仲良くなれる人懐っこい性格の持ち主で、その内側には、ぶれない芯の強さが宿っていました。
「困っている人を助けられるような仕事をしていきたい」
そんな話をしていると、彼はまっすぐな目で「自分も同じ夢をやっていきたい」と応えてくれました。あの日の彼の輝いていた目を、今でも鮮明に覚えています。
それからの日々は、まさに戦友であり、親友としての時間でした。
厳しい時期を共に乗り越え、パンやカフェなどの店舗立ち上げやブランドづくりを一緒に手掛けたときも、中心にいたのは彼でした。彼が開発し、職人に頼らない仕組みを考え抜いて創り上げたブランドは、多くの人に愛される成功を収めました。彼の確かな技術と、仕事に対する誠実さ、そして何より「良いものを届けたい」という純粋な情熱があったからこそ乗り越えられた事業でした。
お互いに独立したあとも、クラフトフードカンパニーを設立し、個々で仕事を受けながらも、私たちの心の中にはいつもお互いの存在がありました。
彼の意思を、この胸に継いで
しかし、彼は37歳という若さで、突然この世を去ってしまいました。
もう一緒にものを創ることも、珈琲を飲むこともできない。
「一緒にやりましょう」と、あの日のように力強く微笑んでくれた彼の声は、もう現実には聞こえません。
もっと何かできることがあったのではないか。そんな後悔と自問自答の日々が続きました。
けれど、彼が遺してくれた情熱や、私たちが共に描いた夢の続きは、今も心の中に生き続けています。
私たちが目指す未来
時代は変わり、昭和から平成、そして令和へ。
世の中は急速に便利になり、選択肢が増えた一方で、本当に大切なものや心の豊かさが見えにくくなっています。情報に翻弄され、目的と手段を見失ってしまう個人や企業が多い今だからこそ、立ち止まり、問い続けなければならないと思いました。
私たちがこの先出会う人たちに伝えたいのは、「その人の本当にやりたいコトや、諦めていた夢を叶える力になりたい」ということです。
食の分野に限らず、起業のスタートアップ、事業のロードマップ策定、デザインやブランディング、そして日々の細やかな伴走支援まで。私たちがこれまで培ってきた知恵や技能を最大限に活かし、クライアントの個性に寄り添いながら、ビジネスを共に形にしていくこと。
ただ生きるためではなく、人生を豊かに彩る仕事や文化を育むこと。そして、自分自身も、その家族も、これから出会う大切な人たちも、みんなが豊かに生きられる循環や文化を作ること。
彼のこれまで培ってきた技術も、彼が叶えたかった未来も、すべてが、ここで終わりにならないように。
彼の意思を、そして彼がくれた言葉を胸に。
志を継いで歩み続けています。
メンバー
甲斐 優志
クラフト・フード・カンパニー代表
経営企画コンサルタント・デザイナー
バリスタ・ベイカー
1981年11月14日生まれ。関西のベーカリー企業で約12年間、店舗管理や店舗立ち上げを行う事業本部で経営企画室室長として従事。30店舗以上の事業計画策定、資金調達、出店、運営(年商10億規模)を社長含め4名ほどで牽引。スペシャルティコーヒー専門店での経験を経て、現在はコンサルタント・デザイナーとして店舗・企業・個人事業主のコンサルティング、ブランディング、Web・ロゴ・グラフィックデザイン制作など幅広く対応。
大和郡山市商工会 創業スクール フォローアップセミナー2023年,2024年,2025年 講師
藤田 勝文
ベーカリーコンサルタント
ブーランジェリーシェフ
1984年7月27日生まれ。ベーカリー家業が3代続く家の長男として生まれ、調理学校卒業後、神戸・大阪・奈良・京都の老舗ベーカリーにて技術・理論の修得に励む。「感謝をカタチにするパン」をコンセプトに、ベーカリーコンサルティングとして独立。多ジャンルにパン文化を親しんでもらうべく各企業と商品開発を行う。誰からも愛される誠実なモノづくりを追求した彼の遺した情熱と志は、今も私たちの心の中で生き続けている。